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やまりすがたべるもの

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やまりす食堂(とり中華の巻)

(背景音に「山のこりす」が静かに流れる店内に、「またですって?」「続けて?」「りすのくせに?」「天狗になっているのよ」「どんだけー」・・・などと、ざわざわとした、微かな囁き声が聞こえる。)

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りす男爵「この席、相席してもよろしいかな?」
のりす「えー、他にも席空いているのに? まあ、いいけどさ。」
りす男爵「わたしは、りす男爵、よろしく・・・」
のりす「山高帽なんかかぶって、ステッキも持っている。なんか変。」
りす男爵「わたしは、タイムトラベラーなんじゃ。」
のりす「えー、またか。(引っぱるなあ)」
りす男爵「過去から、やってきたんじゃ。」
のりす「道理で、時代がかっている・・・」
りす男爵「この時代が気に入ってなあ・・・、どうしてだと思う?」
のりす「さあ・・・」
りす男爵「おいしいラーメンがあるからさ! はっはっはっ・・・」
のりす「ふうん。」
りす男爵「それで、あちこち、いろいろと食べ歩いているんじゃ。」
のりす「じゃあ、ラーメンブロガーか?」
りす男爵「何だそれは?・・・わたしは、手帳に、日記をつけているだけだ、はっはっはっ・・・」
のりす「古いなあ。」

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なんちゃってとり中華@手打ち水車生そばリスペクト風

りす男爵「これは、山形は天童の名物、とり中華をまねしたものだな。」
のりす「そうだね。」
りす男爵「うん、うまいな・・・」
のりす「やまりす先輩が作ったんだ。(片手を衝立のように口元にやり、小さな声で)調子に乗っちゃっているみたいなんだ・・・」
りす男爵「見た目、全然、違うけどな・・・何かおかしいなあ・・・よく見ると、何もかもが野太いな。」
のりす「ええ、まったく・・・、よく見なくても、恐ろしいくらい別物だ。でも、全部、手作りだって、揚げ玉も・・・」
りす男爵「そうか、まあ、揚げ玉も、もっと繊細なんだけど・・・まあいいか・・とりだしに、そばつゆに、蕎麦屋の揚げ玉・・・あれ? 三つ葉が入っておらんなあ。忘れたな。」
のりす「本当だね。」
りす男爵「水車のとり中華はうまいからなあ。初めていただいたのは、もう10年くらい前かな。」
のりす「えー、そんなに前から来ているの?」
りす男爵「わたしは、水車のご主人に、直接、とり中華を作ってもらったこともあるんだぞ、はっはっはっ・・・」
のりす「へえー」
りす男爵「朝一で行って、開店を待っていたら、ご主人が、玄関でそうじをしていてな、二言三言話したら、ちょっと時間前だったけれど、入れてくれて、作ってくれたんだ。とり中華を運んできた仲居さんが、そんなことはめずらしいんですよ、と言っていた。やっぱり、さすがに、その時、いただいたのが、一番おいしかったなあ・・・」
のりす「ちぇっ、自慢話かよ。」
りす男爵「あのとり中華は、まさに、絶妙のセンスじゃ。やたらにまねしても、なかなか、いい感じにはならない。やっぱり水車のは、冴えが光っている。ただ揚げ玉を入れればいい、ってもんじゃない。」
のりす「これは?」
りす男爵「これは、いい方じゃ。(片手を衝立のように口元にやり、小さな声で)としておこう、はっはっはっ・・・」
のりす「胡椒と一味が効いているね。」
りす男爵「そう、それがまた合うんじゃ。」
りすひろし「そうなんです! 胡椒と一味とうがらしがポイントなんです。」
のりす「あっ、りすひろし・・・いつの間にあらわれたんだ・・・あっ、ポケットに両手を突っ込んでいる・・・」
りすひろし「からしです。鶏肉と揚げ玉ととりスープに、からしが絶妙に合うんです・・・、からしです、からしです、からしです・・・」
のりす「強引だ・・・何だか、やけくそみたいだなあ・・・」
りす男爵「いやあ、君は、なかなかおもしろいなあ。気が利いてるよ・・・はっはっはっ・・・」
のりす「ちぇ、調子いいなあ」

(りすひろし、頭を掻き、照れ笑いを浮かべながら退場。)

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のりす「どうやって、タイムトラベルするの?」
りす男爵「この錠剤を呑むのさ。」
のりす「ラベンダーの香りがついている・・・」
りす男爵「白いのが未来、黒いのが過去、じゃ。」
じりす「地味な色だな。」
りす男爵「りすは色盲だから、この方が間違えないんだ。」
のりす「なるほど。」
りす男爵「ああ、うまかった、満腹じゃ。食後の一杯の水で、これを呑むか。」
のりす「あ、呑んだ!」
りす男爵「では、お別れだ・・・はっはっはっ・・・」
のりす「あっ、姿がおぼろげになって、消えていく・・・消えた!・・・」

(りす男爵の姿は掻き消え、その後、その笑い声の余韻のようなものだけが、微かに聞こえ続け、それも、だんだん小さくなり、やがて、聞こえるか聞こえないかになり、ついで、残響だか、気のせいだかわからないようになり、ついには、完全に、何も聞こえなくなった。それから、ほどなくして、外のどこかで、どばとが、くぐもった、ひずんだ、低い、どこか凄味のあるような声で鳴きはじめ、何度か、その独得な単調なフレーズを繰り返し、ついで、唐突に鳴き止み、すると、すべては、忽然と消え失せた。)


(りすファーム門番 ふえふきどり & けけけどり)





手打ち 水車生そば@天童市
by dasenkadasenka | 2011-09-06 17:18 | やまりす食堂